警備業法第45条に基づき、営業所ごとに備え付けが義務付けられている帳簿の中に**「苦情処理簿」**があります。
立ち入り検査の際、多くの会社が**「該当なし(過去1年、苦情はありませんでした)」**と書いた白紙の書類を出します。しかし、ハッキリ言います。これは逆に生安課の検査官に疑われる原因になります。
何十人、何百人もの隊員が毎日現場で動いていて、クレームが1件もゼロなんてことは、実務上あり得ないからです。検査官は「この会社は苦情を隠蔽しているのではないか」「現場のトラブルが本社に報告されない風通しの悪い組織なのではないか」と勘繰り、逆に他の書類を厳しくチェックし始めます。
些細なクレームでもしっかり記録し、**「会社としてどう誠実に対応し、再発防止策を講じたか」**をアピールする帳簿にするのが、正しい防衛術です。
ちなみに私は昨年2件書きました。
苦情処理簿には、警備業法施行規則第66条に基づき、以下の項目を正確に網羅する必要があります。
【記入例フォーマット(交通誘導・施設共通)】
項目 記載内容の例
苦情を申し出た者の氏名・連絡先 〇〇 太郎 様(現場周辺の近隣住民) / TEL:090-XXXX-XXXX
苦情を受けた年月日 2026年6月2日
苦情の原因となった警備業務 〇〇マンション新築工事に伴う交通誘導警備業務(第2号警備)
苦情の内容 誘導員が一般車両を停止させる際、高圧的な態度と言葉遣いで誘導され、不快な思いをしたとのクレーム。
原因究明の結果 当該隊員ヒアリングの結果、焦りから口調が強くなっていた事実を確認。現場の無線連携不足による心理的余裕のなさが原因。
処理の結果(再発防止策) 苦情受領後、即座に現場責任者が申出人宅へ訪問し謝罪。当該隊員への接遇再教育を実施。また、現場の無線配置を見直し、余裕を持った誘導体制へ改善した。
18歳叩き上げが警告する「苦情処理簿の落とし穴」
① 「クレーマー」と決めつけて書かない罠
現場では理不尽な物言いをする通行人やクライアントもいます。しかし、苦情処理簿に「相手の一方的な言いがかり」「悪質なクレーマーのため対応終了」などと感情的に書いてはいけません。
検査官が見るのは**「警備業者の客観的かつ冷静な対応」**です。どんな相手であれ、事実関係を淡々と調査し、会社としてのプロの対応を記録に残してください。
② 保存期間のミス
苦情処理簿の保存期間はありません。過去のトラブル記録も大切に保管してください。
まとめ:苦情処理簿は会社の「信頼性」を証明する盾
18歳で警備業界に入ったばかりの頃、私は「クレームを出すなんて恥ずかしいことだ」と思っていました。しかし、指教責となり多くの監査を経験した今では、「トラブルにどう向き合ったか」の記録こそが、生安課に対する最大の信頼の証になると確信しています。
「苦情なし」の真っ白な書類を出すよりも、軽微な報告とそれに対する迅速な改善策が美しく書かれた苦情処理簿を出す方が、検査官は「しっかり統制が取れているな」と安心します。
今一度、現場から上がってきた「ヒヤリハット」や小さなクレームの報告書が、苦情処理簿に正しく還元されているか確認してみてください。



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